アリスト社労士事務所(港区・渋谷区)のブログ

2022年08月

2022.08.28

管理監督者の条件・割増賃金・労働時間の把握について

東京都渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

「管理監督者」は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。そのため、深夜労働に対する割増賃金についても支払わなくてもよいといった管理監督者に関する誤解が見受けられます。本日は、管理監督者の定義、求められる深夜割増賃金の支払いと労働時間の把握についてご案内させていただきます。
「管理監督者」に当てはまるかどうかは、単に部長、課長などの役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します。

管理監督者として認められる条件

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない「重要な職務内容」を有していること

労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない「重要な職務内容」を有していなければ、管理監督者とは言えません。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない「重要な責任と権限」を有していること
労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。「課長」「係長」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、
管理監督者とは言えません。 
現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであ ること
管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。労働時間について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者とは言えません。 
賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること がなされていること
管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていなければなりません。 

深夜割増賃金の支払い

管理監督者については、労働基準法第41条により、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用が除外されています。具体的には1週40時間、1日8時間の労働時間、原則60分以上の休憩、原則週1回の休日のことです。しかし、深夜時間(22時から翌日5時まで)に対する労働については除外されておらず、管理監督者が深夜時間に労働をした場合には、深夜時間に対する25%の割増賃金(深夜割増賃金)の支払いが必要になります。

労働時間の把握の必要性

2017年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定されました。労働時間の把握や管理はこのガイドラインに沿う必要がありますが、管理監督者はこの対象から除かれていました。ただし、ガイドラインの中では「ガイドラインが適用されない労働者についても、健康管理を図る必要があり、使用者において適正な労働時間管理を行う責務がある」とされています。また、労働安全衛生法のでは、2019年4月に長時間労働者に対する面接指導を確実に実施するよう労働者の健康管理が強化されました。面接指導を実施するには、前提として労働時間の状況の把握が必ず必要となります。一般の労働者は当然のことですが、管理監督者についても労働時間の状況を把握する必要があります。
以上、ご参考にしていただければ幸いです。
ここまで当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2022.08.21

会社の健康診断の費用負担と時間について

東京都渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

本日は、当事務所のクライアント様から問い合わせ、確認が多い、健康診断についてご案内いたします。
問合せの事例としましては、「健康診断は、会社が負担すべきか?従業員負担では駄目なのか?」「健康診断の時間は、有給なのか?無給で構わないのか?」「土曜日受診させる場合は、休日出勤に該当するか?」等です。

健康診断の費用負担は?


健康診断は法律により企業に実施が義務付けられているものです。費用は企業が全額負担することが労働安全衛生法にて定められています。
つまり、会社負担です。
昭和47年9月18日 基発第602号(通達)によりますと、「法令で定められた健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること」と通達が出ています。

健康診断を受ける時間は勤務時間?

一般の定期健康診断は労働時間扱いとする義務はありません。ただし特殊健診は労働時間となります。
一般健康診断につきましては、通達で、望ましいと、下記の通り記載がありますが、義務ではありません。

昭和47年9月18日 基発第602号(通達)には、健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。
ただし、特殊健康診断につきましては、「特定の有害な業務に従事する労働者について行なわれる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行なわれるのを原則とすること。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該健康診断が時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。」と通達で記載があります。
(ご参考)
〇一般健康診断とは?
職種に関係なく、労働者の雇入れ時と、雇入れ後1年以内ごとに一回、定期的に行う健康診断です。多くの会社でいう健康診断とはこちらになります。
ただし、一般健康診断には深夜業や特定の業務に従事する従業員に6ヶ月以内ごとに1回実施する「特定業務従事者健康診断」は、含まれません。
〇特殊健康診断とは?
法定の有害業務に従事する労働者が受ける健康診断です。
以上、ご参考にしていただければ幸いです。
ここまで当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2022.08.14

2022年10月から101人以上の会社で週20時間以上勤務のパートが加入対象となります②

東京都渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

以前のブログでご案内させていただきましたが、2022年10月に社会保険の適用拡大として、厚生年金保険の被保険者数が常時100人超である企業について、短時間労働者にかかる社会保険の加入要件が変更となります。

今後、パートタイマーやアルバイト等の短時間労働者から加入にかかる相談の増加が予想されることから、本日は、以前のブログの内容を掘り下げて、「賃金の月額が88,000円以上であること」について短時間労働者の社会保険加入における賃金の根拠をご案内します。

社会保険における報酬の範囲

会社が従業員に支払う賃金について、どのような賃金体系にするかは企業の裁量となります。そこで多くの会社では、基本給と各種手当を設けて支払っている場合が通例です。
社会保険の標準報酬月額を決定する際、対象となる賃金は、従業員に支払われる賃金のうち、基本給のほか、通常、役職手当、家族手当、住宅手当、別居手当、勤務地手当、通勤手当、割増賃金等の現金で支払われるものが対象です。
例外的に、現物で支給(借上げ社宅等は面積により現物給付額が定められています。)されるものも含まれるとされています。さらに、年4回以上支給される賞与についても報酬に含まれるます。賞与は年3回までと規定されているためです。

短時間労働者の加入要件における賃金

短時間労働者の加入要件に「賃金の月額が88,000円以上であること」がありますが、この賃金とは、週給、日給、時間給を月額に換算したものに、諸手当等を含めた所定内賃金で判断します。
つまり、下記例の所定外賃金については賃金を除くことになっています。
[除外対象例]
〇臨時に支払われる賃金および1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
〇時間外労働、休日労働および深夜労働に対して支払われる賃金(残業手当、休日出勤手当、深夜手当)
〇最低賃金法で算入しない賃金(精皆勤手当、通勤手当、家族手当)
ここでの大きなポイントは、短時間労働者で支給されている通勤費や残業手当、深夜手当、休日出勤手当は、除外して88,000円以上であるか否かです。
以上、ご参考にしていただければ幸いです。
ここまで当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

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