アリスト社労士事務所(港区・渋谷区)のブログ
2020.07.19
年俸制導入の注意点
東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。
最近、当事務所のクライアント様の中に年俸制を挿入されている企業が増えてきていますが、年俸制について誤った解釈をされているケースが見受けれます。
一番多いのは、年俸制だから残業代の支払いは不要!!!??
です。これは誤った考え方であって、年俸制でも残業代は発生します。ただし、残業代が発生しないケースもあります。それは、管理・監督する地位にある者や、機密の事務を取り扱う者などについては、労働時間や休憩及び休日に関する規定が適用されないとしています。また、土地の耕作や植物の栽培など、林業を除く農林事業や、動物の飼育や水産動植物の養殖、その他畜産などの事業に従事する人にも、これらの規定が適用されません。
ただし、上記を除けば、残業代は年俸制であっても発生します。
そもそも残業代は、月給制でも年俸制でも、法定労働時間を超えると、時間単価の1.25倍の割増賃金を支払う必要があります。
年俸制の場合は、賃金支払の原則から、年俸額を12分割して、毎月、12分の1ずつを月例給与として支給するのが一般的です。
割増賃金を計算するうえでの根拠は、年俸額の12分の1となる平均賃金÷月平均の所定労働時間×1.25という計算式となります。しかし、私が勤務した外資系企業がそうでしたが、企業によっては、年俸の一部を賞与として支給、残りを12分割した月例給与として支給している場合があります。
私のケースは、年俸額のうち、16分の1を月例給与として支給し、16分の4を年2回の賞与として支給されていました。
そもそも、賞与は臨時に支払われた賃金とされるため、割増賃金を求めるための根拠からは除外されています。
しかし、労働基準法では、年俸制における賞与は、年俸額が決定した段階で労働者に支払う総額が確定しているという理由より、たとえ賞与という名称で支給しても、臨時に支払われた賃金には該当しません。
つまり、年俸制を導入している企業が、自社で定めた賞与比率で賃金を支払ったとしても、割増賃金の根拠から除外できません。
つまり、年俸額を12で割った額を根拠として月額賃金を算出し、そこから割増賃金を算出することになりますので、もし、既に導入されている場合は、規定。雇用契約の見直しや、給与計算を遡及して見直す必要があります。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。