アリスト社労士事務所(港区・渋谷区)のブログ

2018年12月

2018.12.26

出退勤などの勤怠管理簿の保管期間について

 東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

最近、以前からのタイムカ-ドをクラウド型の勤怠システムに変更されるクライアント様が多くなってきています。
ここで、問題となるのは、この古いタイムカ-ドの保存期間です。

2017年1月に厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署は、労働時間データの取り扱いルールとして「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を新たに策定しました。 その内容は、使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録することとあり、使用者が労働者の労働時間を記録する義務を負っているとされています。 
また、労働基準法108条・労働基準法施行規則54条では、使用者は各事業場ごとに賃金台帳を作成しなければならないことと、労働者の氏名、性別、賃金計算期間、労働日数や時間数など、賃金台帳に記載すべきことを定めています。 
使用者は、出勤簿やタイムカードなどへの勤怠記録によって把握した労働者の始業・終業時刻などのデータにより、賃金算定期間ごとの
1.労働日数
2.労働時間数
3.休日労働時間数
4.時間外労働時間数
5.深夜労働時間数
などを算出して、賃金台帳に記入します。 
この勤怠記録は、賃金台帳に記入し終わった後でも、すぐに廃棄することはできません。
労働時間の記録は、労働基準法109条で定める「労働関係に関する重要な書類」に該当しますので、書類の完結の日から3年間は保存義務があります。 
ただし、管理職は対象外となります。労働基準法では、「管理監督者」と定め要件は以下の通りです。
1.経営者と同等の重要な権限を有している
2.一般社員と比較して相応の賃金上の処遇を与えられている
管理職は自身の出退勤の管理を受けないため、労働時間・休日・休憩の規定が適用されず、残業代の支払い対象になりません。このことから、出退勤の記録や保存の対象外となっているわけです。 
つまり、管理職の職務内容が、この労基法における「管理監督者の要件を正しく満たしているのであれば、その出退勤データの保存は、原則としては不要ということになります。 
ただし、例外として深夜勤務につきましては、深夜業の割増賃金に関する規定は排除されませんので注意が必要です。
しかし、管理職であっても、健康や安全に配慮する義務は使用者にありますので、勤怠管理をすることは必要と考えます。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
 

2018.12.19

正社員と契約社員の格差の判例のご案内

 東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

昨今、正社員と契約社員(有期契約労働者)の賃金等の格差が取り上げられるようになり、2018年6月1日、最高裁が一つの方向性を示しました(ハマキョウレックス事件)。
正社員と契約社員で賃金・手当に差を設ける場合、ハマキョウレックス最高裁判決を例にご案内します。

最判小二平成30.6.1/「ハマキョウレックス事件」
・事案の概要 
Xは、Y社との間で契約社員として有期労働契約を結ぶトラック運転手である。
Xは、Y社に対し、正社員との労働条件の相違が不合理であり、労働契約法20条に違反すると主張して、正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認、各手当の支給(主位的)、差額相当額の損害賠償(予備的)を求めた。
 争点になったのは、
①無事故手当
②作業手当
③給食手当
④住宅手当
⑤皆勤手当
⑥通勤手当
⑦家族手当
⑧賞与
⑨定期昇給
⑩退職金
についての格差である。
なお、⑦~⑩についての請求は、附帯上告受理の際に排除されており棄却されている。
Y社においては、正社員と契約社員で業務内容及び業務に伴う責任の範囲に相違はなかった。
 他方で、正社員は配置転換や出向が予定され、等級役職制度の適用があったが、契約社員はいずれも予定されず、適用されないこととなっていた。
・判旨の概要
 労働契約法20条は、有期契約労働者の労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、労働条件の相違があることは前提として、その相違が職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して不合理でないことを求めた規定である。
したがって、有期の者と無期の者の労働条件の相違が、期間の定めがあることに関連して生じた際に、それが不合理と評価される場合には、その相違については無効となる。
①無事故手当 → 不合理
 優良ドライバーの育成や安全な輸送への顧客の信頼獲得のための手当なので、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。
②作業手当 → 不合理
 特殊作業を行った対価であり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。
③給食手当 → 不合理
 勤務時間中に食事をとらねばならない従業員に対する補助であり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。
④住宅手当 →不合理ではない
従業員の住宅費用補助を目的とし、正社員には転居を伴う配置転換が予定されているため、契約社員よりも費用が多額にわたる可能性があるため、相違は不合理ではないと評価された。
⑤皆勤手当 → 不合理
 運送業務を円滑に行い従業員の出勤を確保するための手当であり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。
⑥通勤手当 → 不合理
 通勤交通費を補助する趣旨のものであり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。
【結論】
 労働契約法20条違反だからといって契約社員の契約内容が正社員と同じものになるわけではなく、正社員と契約社員の就業規則が別に作られているので、地位確認請求及び差額賃金請求は認められない。
 予備的な損害賠償請求は不合理とされた範囲において認められる
この判例は、正社員と契約社員の職務内容や配置転換の予定等を詳細に検討し、手当ごとにその目的や趣旨を考えた上で判断されています。正社員と契約社員の職務内容が同一であったため、手当の相違が不合理と認められています。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.12.16

36協定のフォーマットの刷新について

 東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

働き方改革法案成立に伴い、早速来年4月から36協定の様式が変わります。今後、36協定届の届出について、一層の注意が必要になります。本日は、新様式の内容と注意すべきポイントについてご案内させていただきます。

まず大きな変更点として、「通常の36協定」と「特別条項付きの36協定」の届出方法が区分されることとなりました。「特別条項付き」とは、法定時間外労働の限度時間を超える場合に特別な申し立てをするものですが、通常の36協定届である「限度時間内の時間外労働についての届出書」に加えて「限度時間を超える時間外労働についての届出書」を別途届け出ることになりました。

そのほか、協定様式内に「上記で定める時間数に関わらず、時間外労働および休日労働を合算した時間数は、1箇月について100時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して80時間を超過しないこと」という文言が加えられ、この文言箇所にチェックをつけないと協定の有効性が否定されることとなります。

限度時間を超える時間外労働についての届出書については、今まで以上に記載に注意が必要です。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございます。


特に、①臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合(事由)の内容(ただ単に「業務上の都合」というだけでは足りず、突発的で止むを得ない事情があることを書かなければならない)②限度時間を超えて労働させる場合における手続き(労働者側とどのように話し合うか)③限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(止むを得ず臨時に限度時間を超えて働かせた場合のケアの方法。ケアの方法についてはあらかじめ列挙されている※)についてよく検討しましょう。


※限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保するための措置について、次の中から協定することが望ましいとされています

2018.12.12

時間外・休日労働に関する協定(建設業)

東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

当事務所のお客様は、当事務所が社会保険労務士と行政書士業務を行っているため、建設業が多いです。

今まで、建設業は、「時間外・休日労働に関する協定」につきましては、適用対象外でした。
「時間外・休日労働に関する協定」とは?
法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)以上の残業や法定休日出勤を課す場合、「時間外労働・休日労働に関する協定書」を締結し、「36協定届」を労働基準監督署に届け出る必要があります。労働基準法第36条に定められているため、「36協定」と呼びます。

大手企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用されます。
1. 原則月45時間かつ年360時間(月平均30時間以内の残業時間に抑える必要がある)
2. 臨時的に特別な事情があり、かつ双方の合意がある場合、年720時間(=月平均60時間)
(「特別条項付き36協定」※)
3. 年720時間以内を前提に、複数月の平均が月80時間(休日労働含む)以内、単月なら月100時間未満(休日労働含む)
※「特別条件付き36協定」
特定の時期に繁忙期が存在する職種や業種によっては、労働基準監督署へ「36協定届」を提出する際に、書類に「特別な事情」を明記し、労使間で協議し了承を得ることで、月45時間の上限を超えることが可能です。特別条項の残業上限については、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定することが可能です。しかし、上限を拡大して45時間を上回る月は1年のうち年6回までです。

上記が建設業にも2024年4月から適用されることになりますので、2024年までに、対策を練る必要があります。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.12.09

休憩時間について

 東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

12月も1週目が終了しましたね。12月は、クライアント様の賞与計算や賞与支払届、年末調整の時期ですので、繁忙期となります。
本日のテ-マは、休憩時間についてです。
休憩時間といえば、昼休みや、午後の休憩時間などがあります。

この休憩時間は、一斉に事業所全体として与える義務を会社はもっています。
昼休みの電話応対等で、休憩時間をずらして与えることは、原則として認められませんので注意が必要です。

ただし、業務の都合上、やむを得ない場合は、労働者の過半数で組織する労働組合または、労働者の過半数代表者(労働組合がない場合)との労使協定を締結することにより、一斉休憩を与えないことが可能です。
労使協定の内容としましては、「一斉に休暇を与えない労働者の範囲」「当該労働者に対する休憩の与え方」について定めます。この協定は、労働基準監督署へ提出する必要はありません。 

ところで、業種によっては、一斉休暇が除外されている業種があります。
労基則31条では、物品の販売、配給、保管もしくは賃貸または理容の事業、金融、保険、媒介、周旋、集金、案内または広告の事業(9号)などです。 

会社として、一斉休暇の付与をどうしても与えることができない場合は、まずは、会社が除外業種であるか否か確認され、除外業種でない場合は、労使協定を交わすことになります。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

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