アリスト社労士事務所(港区・渋谷区)のブログ
2018年09月
2018.09.30
最低賃金の大幅改定の対応について
東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。
今年の9月は、どんよりした天気が多すぎますね。
もう、いい加減うんざりです。
関東地区も夜から暴風雨が強くなるようですね。
さて、本題ですが、10月より、最低賃金が変更となります。
当事務所のクライアントさんから、「また、最低賃金上がるの?」「経営が厳しくなるよ」とお声をいただくことがあります。
もし、最低賃金ギリギリの賃金を定めている場合、最低賃金額の改定に合わせて見直すとことといえば
1.昇給か?
2.労働時間の短縮?
※システム・AI化による自動化を進めて「最低賃金の従業員」を雇わないという選択肢もありますが、すでに雇用している従業員に対する何かしらの対応は必要です。
昨今の労働市場の売り手市場化により、最低賃金に先立って1の昇給がなされているケースも多く見られますが、コンビニなど小売業や製造業、サービス業ではまだまだ最低賃金スレスレに時給を設定しているところもあります。
この場合、最低賃金上昇が運営上の問題になるのが、「先輩社員と新人の給与の差がつけられない」と言う点です。
例えばコンビニや飲食店では、高校生アルバイトと社会人のアルバイトの時給格差が目に見えて縮まっているようです。
最低賃金が上昇し、平均時給が上昇するとしても従業員のモラルや労働生産性、売り上げの向上は大抵比例しないため、オーナーが頭を抱えている現状があります。
何をインセンティブにするべきか?
(1)売上向上施策実行
売り上げをあげる取り組み
(2)採用
友人を従業員として紹介するなど、紹介制度の導入
(3)精勤
欠勤や遅刻がない場合に精勤手当の支給
(4)コストカット
無駄を省く意識づけと実行
(5)教育
後輩を育てる
などです。
ここまで当事務所のブログを読んでいただき、ありがとうございました。
2018.09.26
深夜手当と深夜残業手当の違い
東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山 博之です。
今年の秋の長雨は、長すぎますね。
いい加減、雨はうんざりです。
また、台風も発生し、日本横断の予想のため、被害が出ることも懸念されます。
さて、クライアントさんからの質問の事例をご案内します。
深夜手当と深夜残業手当の違いです。
労働基準法は、22時から5時までは、25%の割増の深夜手当支払いの義務を課しています。
ただし、以下の2つのパタ-ンで支給金額が異なります。
例1
始業9:00 休憩時間12:00から13:00 就業18:00と仮定し、
9:00から深夜1:00まで勤務した場合
時給1,000円と仮定
(1)9:00~18:00 1,000円×8時間=8,000円
(2)18:00~22:00 1,000円×125%×4時間=5,000円
(3)22:00~深夜1:00 1,000円×150%×3時間=4,500円
合計17,500円の賃金が発生します。
(2)は実働8時間を超えた場合の125%の割増賃金です。
(3)は実働8時間を超えた上にさらに22:00以降も勤務のため125%+25%(深夜割増)=150%の割増賃金となります。
例2
始業18:00 休憩時間深夜0:00~1:00 終業深夜3時と仮定し、時給1,000円と仮定
(1)18:00~深夜3時 1,000円×8時間=8,000円
(2)22:00~深夜3時 1,000円×25%×4時間=1,000円
合計9,000円の賃金が発生ます。
(2)は、22:00以降(休憩時間を除く)の深夜手当となります。
この例1と例2を混同される場合が多いので、ご参考に勤怠管理や給与計算をしていただければ幸いです。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
2018.09.23
特別条項と改正労働基準法の残業時間の上限
東京・渋谷のアリアスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。
最近、爽やかな秋晴れが少なく、どんよりした曇り空や雨が多くなっていますね。
これも、地球温暖化の原因でしょうか。
さて、本題です。
前回、社員に残業してもらうためには、「36協定」が必要とご案内しましたが、さらに、業務の都合により臨時的に定められた限度時間を超えて残業をしてもらわなきゃいけない「特別な事情」が予想される場合、「特別条件付きの36協定」を結ぶことで、限度時間を超えて残業をしてもらうことが認められます。
「特別な事業」とは臨時的な業務で以下のようなことです。
・決算や予算策定業務 |
改正労働基準法上のポイント
これまで、「特別条件付きの36協定」を締結すれば残業時間の時間が事実上の青天井となっていました。
改正労働基準法では、36協定の締結によって、【1日8時間・1週間40時間】の原則を超えて残業が可能となる時間上限を原則として「月45時間・年360時間」と法制化しました。(中小企業は2020年4月施行)
また、「特別条件付きの36協定」を結んだ場合でも、上限が年720時間迄とされ、以下の要件が必要です。
〇複数月(2・3・4・5・6か月)の平均で、いずれも80時間以内(休日労働を含む)
〇1か月において月100時間未満(休日労働を含む)
〇月45時間を超えることができるのは年6回を上限とすること
ここまで当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
2018.09.19
固定残業制度判例のご案内
東京・渋谷のアリスト社労士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。
働き方改革の流れは止まることなく、長時間労働に対する世間の目はますます厳しくなっています。残業代を固定的に支給する固定残業制度についても、どちらかというとネガティブな印象を与えてしまいます。さらに固定残業代を巡った労使紛争も起きているようです。再度、固定残業代の仕組みと、最近の重要な判例についてご案内します。
そもそも固定残業制度とは
固定残業制度とは、一定の残業を見込んで残業代を定額で支払うことを言います。固定残業制度の成立要件として4つ挙げられます。
1. 就業規則・雇用契約書に記載されていること 2. 固定残業代業代に相当する残業時間を明示していること 3. 給与明細上、固定残業手当が分離して記載されてあること 4. 固定残業代に不足があれば支払っていること |
このうち一つでも満たしていない場合には固定残業制度そのものが無効とされ、「残業代を払っていない」と判定されるというのが定説です。実際に労使の裁判においても、この4つの要件が重視されてきました。
1.就業規則・契約書の明記 |
7月の薬剤師の判例
ところが、7月19日に公表された最高裁判決において、この定説通りでない事例が出ました。この裁判の原告は薬剤師で、雇用契約書に「月額562、500円(残業手当含む)」「給与明細書表示(月額給与461、500円 業務手当101、000円(みなし時間外手当)」などの記載がありました。一審二審では、前述の要素のうち「②固定残業代に相当する残業時間を明示していること」「④固定残業代に不足があれば支払っていること」を満たしていないことから、定額残業代制度を無効とみなしましたが、最高裁では一転して固定残業代制度を有効なものとしました。
なぜ固定残業代制度が有効とされたか
判旨によると、定額残業代制度が有効であるか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、
⑴使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容
⑵労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情
を考慮して判断すべきとしています。
今回、⑴について、原告以外の他の社員に対しては定額残業代に相当する残業時間(30時間)を明示し、サインをもらっている書面がありました。また、⑵実際の残業時間を計算したところ、定額残業代で定める30時間とほとんど差異がありませんでした。これらの事情が考慮されたものと思われます。加えて、30時間程度という毎月の残業がこの種の裁判の中では比較的少ないこと、並びに原告の給与月額が50万円超と、世間一般的に見て高いことも影響しているのかもしれません。
固定残業制度実務への影響
この判例の中で注目すべきは「差額を計算して払っていないから即無効というわけではないが、見込み残業時間が過度に長くないこと、ならびに実際の残業時間との乖離が少ないことが大切」という判断がされたことでしょう。今までの定説通り書面の整備は重要ですが、加えて「実際の残業を定額残業代の範囲に抑える」ことの重要性がますます高まっていきそうです。
ここまで当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
2018.09.16
改正労働基準法有給休暇5日の取得義務化
東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。
世の中は、3連休の真っ只中ですね。昨日は、中学生の次男の体育祭でしたが、あいにくの雨で中止ととなりました。
水曜日に延期とのことで、見に行けなくて残念です。
さて、改正労働基準法の件で、前回のブログを見たクライアントさんから、「所定休日の夏季休暇を、年次有給休暇小か扱いへ変更ができないか」と質問がありました。
本日は、この質問の件についてご案内させていただきます。
前回のブログと重複してしまう部分がありますが、
1.休日と休暇の違いについてご案内します。
そもそも、「休日」と「休暇」は法律上明確に異なります。休日とは労働義務のない日を指し、休暇は労働義務がある日ですが、申請により労働義務が免除されるものを指します。休日は「法定休日」と「法定外休日」に分類され、法律上与えなければならないのは「法定休日」と「就業規則などで規定された法定外休日」に限ります。休暇は、法律上定められた年次有給休暇など一部を除いて与える義務はありませんし、必ずしも有給にする必要もありません。
休日 | 休暇 | |
労働義務 | なし | あり |
与える義務 |
あり (法定休日、就業規則などに規定した |
なし (ただし法定の年次有給休暇、育児・介護 |
例 |
法定休日 法定外休日 |
年次有給休暇 慶弔休暇 |
いわゆる「夏休み」に関して言うならば、就業規則などで「休日」として定めたならば与える義務が発生するが、定めない限り与える義務は発生しません。「我が社には夏季の『休日』はありませんから、夏休みが欲しい場合は有休を申請してください」としても法律上は構いません。
2.有休の計画的付与の要件
夏休みを与える義務は必ずしもないとはいえ、夏季には帰省やレジャーの予定をしている社員も多いため、何らかの連続した休暇があれば望ましいです。この場合に「年次有給休暇の計画的付与」という制度を利用することができます。労使で協定を締結することにより、1年のうち特定の時期に有給休暇を取得させることができるものです。年次有給休暇の計画的付与のための要件は以下の通りです。
就業規則などにより計画的付与を規定すること
以下の内容を盛り込んだ労使協定を締結すること(労働基準監督署への届け出は不要)
(1) 計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)
(2)対象となる年次有給休暇の日数
(3)計画的付与の具体的な方法
(4)対象となる年次有給休暇を持たない者に対する取り扱い
(5) 計画的付与日の変更
こと夏休みに関していうと、例えば「Aグループは8/1〜8/5、Bグループは8/4〜8/6に有休を付与する」や「8/13〜8/16を有休として計画的に付与をする」などと定めることで、有休消化をさせることが可能です。
3.不利益変更の注意
前回のブログでご案内していますが、もともと「休日」として取り扱っていた夏休みを「有休の計画的付与」と変える場合、もともと働く義務のなかった休日が減ることになるので、労働条件の不利益に変更となります。労働条件の一方的な不利益変更は違法とされるため、事前に十分に社員の納得を得てから変更される必要があります。納得や同意がない場合は、一方的な不利益変更となります。
当事務所のクライアントさんは、社内全体会議の際に、本件を丁寧に分かり易く説明し、全従業員から書面により、同意を得たとのことで、「有給の計画的付与」を導入されたとのことです。
ポイントは、これまでの8月12日から15日迄の休暇を、7月~9月の間で交替で業務に差支えがない範囲であれば、指定した時期に連続5日間年次有給休暇を取得できるとした点が大きいと考えます。これなら、社員にもメリットがありますよね。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
2018.09.12
従業員に残業をしてもらう時のル-ル
東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士の郡山博之です。
本日は、従業員に残業をしてもらう時のル-ルについてご案内します。
1.残業代の支給
今般、未払い残業代問題も多くなっていますので、注意が必要です。
2.就業規則の記載
賃金体系として基本給や年齢給、職能給、住宅手当や扶養手当といった賃金を構成する要素を決めて記載します。賃金の計算方法についても記載の必要があり、時給制や日給制、月給制、年棒制の中から、実際に運用するものをすべて規程に入れます。欠勤や遅刻、早退、あるいは、残業手当の賃金の計算方法を盛り込むとともに、育児休暇や介護休暇などの取得時の賃金の取り扱いについても明記が必要です。また、中途入社の社員に対する日割り賃金の計算方法についても、規定を設けておきます。
3.「36協定」の作成及び労働基準監督署への届出
労働基準法では、1日8時間・1週間40時間と定められています。本来は、残業をさせててはいけません。ただし、労働基準法36条にて会社と従業員の間で「時間外労働に関する協定」※1を結び、労働基準監督署へ届け出ることにより、1日8時間・1週間に40時間を超える残業と、法定休日※2における休日労働を可能としています。
※1 通称「36協定」
※2 1週間に1日の休日
しかし、この36協定の届出を提出せずに、残業をさせているケ-スが多く、今後、指導強化がされていきます。
届出をされていない場合は、速やかにご対応ください。
(ご参考:限度時間)
期間 | 限度時間 | 期間 | 限度時間 |
1週間 | 15時間 | 1か月 | 45時間 |
2週間 | 27時間 | 2か月 | 81時間 |
4週間 | 43時間 | 3か月 | 120時間 |
- | - | 1年間 | 360時間 |
ここまで当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
2018.09.09
従業員を休業させる場合の休業手当について
東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。
最近、集中豪雨・台風・地震とこれまで経験したことのない天災地変による災害が頻発しています。こうした災害により会社を休業しなくてはいけない状況になるケ-スがあります。この休業時の従業員に対する休業手当の取扱いが問題となります。本日は、一般的な休業手当と天災地変の場合の休業手当についてご案内させていただきます。
1. 休業手当とは
労働基準法において、「使用者の責に帰すべき事由」、会社の責任で従業員を休業させる場合は、休業手当の支払いが義務づけられています。これは、会社の一方的な休業によって従業員の生活が脅かされることを防ぐためで、会社は平均賃金の100分の60以上で計算した額を支払わなければいけません。
「使用者の責に帰するべき事由」とは?
・会社の故意・過失による場合(火災などによる工場休業など)
・資金難や原材料不足による経営上の障害(不景気による工場休業など)
2.天災地変の場合
地震や台風などの天災地変については不可抗力によるもので会社の責任や都合で休業させたものではないため、休業手当の支払いは不要となります。ここでいう不可抗力とは、2つの要件を満たす必要があります。
A その原因が事業の外部より発生した事故であること
B 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
このケースについては、会社が直接的な被害を受けていません。つまり、使用者の責に帰すべき事由に該当するとされ、会社は休業手当の支払いが必要になります。しかし、このケースであってもBの要件もあわせて満たす場合は、会社の責任による休業にはならないと解釈されます。具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力などを総合的に勘案し、判断する必要があるとの考え方が示されています。
上記を踏まえて会社として判断する必要があります。
【雇用調整助成金】
会社が休業手当を支払った場合に、それを支援する制度として雇用調整助成金が設けられています。支給要件として、直近3ヶ月の生産量、売上高などの生産指標が前年同期と比べ10%以上減少していることなどの要件がありますが、詳細は、管轄の労働局またはハローワークへお問い合わせください。
厚生労働省より「平成30年7月豪雨について」のご案内を参考にリンクさせていただきます。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございます。
2018.09.05
無期転換ル-ルと定年後の継続雇用制度
東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。
最近、派遣業許可後のクライアント様の書式整備の業務を行っていますが、単に労働基準法や労働契約法だけではなく、民法や契約法などの知識を問われることもあります。通常の社労士事務所では、一般の民法や契約法を専門とする事務所は少ないですが、当事務所は行政書士事務所も運営していますので、非常に強い武器となります。
さて、本年4月より「無期転換ル-ル」が本格開始されました。この「無期転換ル-ル」ですが、2013年の労働契約法改正で導入されたこの制度ですが、実際に無期転換権の行使が発生するのは、2013年4月1日以降に5年以上継続して「有期労働契約」を更新している労働者からの申込みがあった場合のみです。つまり、施行から5年を迎えた本年4月からが本格開始となる年です。
本日のテ-マで最も大きいポイントは、 60歳を定年とする会社では、1年ごとの有期雇用契約によって65歳まで雇用を延長している継続雇用制度を導入されています。ところが、「無期転換ル-ル」は当然のことですが、60歳以降の方に対しても適用されるため、65歳を過ぎて無期雇用契約への転換の申出がなされる可能性が皆無ではありません。
ただし、無期転換ルールの特例を定めた【専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法】によると、「適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は無期転換申込権が発生しない」と定められています。
つまり、定年後に引き続き継続雇用制度等で雇用されるばあであっても、【対象労働者に応じた適切な雇用管理の措置に関する計画】を作成し、 都道府県労働局長の認定を受けないと「無期転換ル-ル」は発生します。
この特別措置法の対象者は、下記の方が対象です。
1.専門的知識等を有する労働者:一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限10年)
2.定年到達後の継続雇用者:定年後に引き続き雇用されている期間
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
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