アリスト社労士事務所(港区・渋谷区)のブログ

2018年07月

2018.07.29

有給休暇5日の取得義務化と所定休日と法定休日の違いと働き方改革法

東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

先週の金曜日に同業の社会保険労務士さんと情報交換を行いました。
話題になったのが、平成30年6月29日の参院本会議にて、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案が可決、成立した「有給休暇5日の取得義務化」の件です。
施行日は平成31年4月1日となります。
施工日は、決定していますが、関連法案の罰則規定については、今後の情報が入り次第ご案内します。

「有給休暇5日の取得義務化」ですが、私が勤務していた金融保険業界の場合、一般的に7月~9月の間で有給休暇を利用して9連休取得させる制度が多いです。この場合は、まさに、有給休暇5日取得義務に該当しますが、製造業など、既に「所定休日」で夏季休暇を付与している場合、この夏季休暇は有給休暇とみなされません。では、この「所定休日の夏季休暇」を有給休暇に変更すれば問題ないと考えられることは、【不利益変更】に該当するため、従業員全員の同意が必要です。

【対策】
年次有給休暇の計画的付与制度を活用し、年末年始・夏季休暇を所定休日と定めていない会社であれば、年末年始・夏季休暇を計画的付与の対象日とすることで対応可能ですし、既に夏季休暇等を「所定休日」にしている会社は、新たに「バ-スデ-休暇」や「クリスマス休暇」・「6月休暇」等を計画的付与の対象日として設けることで対応が可能です。
このような制度を設けない場合、「労務管理」上、必ず有給休暇を5日付与させるという会社内の意識づけが大切です。

具体的な情報を今後、ご案内していきます。

余談ですが、経営者によっては「所定休日」のことを「有給(無給扱いでない)」で休暇を与えるため、有給休暇と誤解される場合がありますが、今回の法改正の有給休暇は、「年始有給休暇」をさします。
(ご参考)年次有給休暇=労働基準法第39条 
年次有給休暇は雇入れの日から起算して、6ヶ月間継続勤務し、その6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続または分割した10日の有給休暇を与えなければなりません。 (嘱託やアルバイト、パート労働者の場合も同じです。)6ヶ月経過後は、継続勤務年数1年ごとに、その日数に1日(3年6ヶ月以後に2日)を加算した有給休暇を与えなければなりません。(ただし、有給休暇の総日数は20日が法律上の限度で、それ以上の日数を付与することは法律上要しません。) なお、法定の基準日以前に付与する場合の8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとして計算します。 有給休暇は、労働者が指定した時季に与えなければなりません。労働者が時季を指定することのできる期間は、2年間です。 

(ご参考)所定休日とは?
労働契約や就業規則等)で「所定労働日」と、「所定休日」とに分けられます。労働契約や就業規則等において定められた休日を「所定休日」といいます。この「所定休日」は、就業規則等で規定していれば、年末年始休暇や夏季休暇等も含まれます。ただし、会社が定めた「所定休日」の中には、「法定休日」が含まれている労働契約や就業規則等が含まれています。例外として労働契約や就業規則等で「所定休日」と「法定休日」と区分されている場合もあります。「法定休日」とは、労働基準法第35条で「使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回の休日、または変形休日制をとっている場合、4週を通じて4日以上の休日を与えなければならない。」と定められています。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.07.25

採用後の試用期間のポイント

 東京・渋谷のアリスト社労士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士の郡山博之です。

多くの会社で入社から1カ月~3ヶ月を試用期間と定めています。その多くは試用期間満了後に正規雇用等へ移行しますが、中には企業文化や職務に適性がなく、残念ながら常用雇用できない人もいます。

そんな時に「試用期間中だから」と安易に解雇すると想定外のしっぺ返しを受けることがあります。
ここで、「試用期間」の法的意味合いをご案内し、その仕組みの活用策をご案内させていただきます。

解雇制限

解雇は、法律によって2つの厳しい制限がかけられています。
A合理的でない解雇は無効」
B30日以上前の予告
です。試用期間中であっても原則としてこの制限を受けるため、軽はずみな試用期間中の解雇はご注意ください。

試用期間中の労務管理

1.雇い入れ14日以内に集中的に適性判断
解雇の制限のうちB30日以上前の予告は、【試用期間中で、かつ雇い入れから14日以内であれば必要ない】とされています。そのため、最初の2週間に集中して適性判断をすることで、解雇予告手当などの支払いリスクを軽減することができます。
とはいえ2週間で判断するのは簡単でありません。遅刻や欠勤など時間にルーズな点はないか?面接時に申告した資格や能力を持っているか?などの表面的な部分を主に確認しましょう。
2.日報による指導履歴の管理
解雇制限のうちA合理的でない解雇は無効という部分をクリアするためには、「解雇が合理的である」という客観的証拠を積み重ねることが最重要です。
中でも重要なのが、①仕事内容は何か②結果はどうだったか③会社が何を指導したかの3つの要素です。この3つの要素を日報の中に組み入れて、試用期間中は大変なことですが、頻繁にやり取りをすることが大前提です。
3.適性がないと判断したら早期決着
日報などで指導しても状況が改善しない場合は「早期の判断・決着」が大切です。試用期間中の解雇理由の多くは「能力不足」と「会社文化とのミスマッチ」であり、それらの問題に対する対処は早ければ早いほどよいでしょう。
時には意見が合わない相手を納得させるために合意金や再就職のための支度金などの金銭解決が必要なこともあります。
早目の判断を心掛けないと会社側も従業員側も不幸となります。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.07.22

働き方関連法の施行について

 東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

東京の猛暑は弱まる気配がないようですね。
来週も土曜日までは、猛暑が続くようです。
7月も残すは1週間とわずか。

さて、働き方関連法が成立しましたが、おおまかなポイントを本日は、ご案内させていただきます。

2019年4月1日から 働き方改革関連法が順次施行されていきます。

1.時間外労働の上限規制が導入

施行:2019年4月1日~ (中小企業は、2020年4月1日~)
(1)残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。(月45時間は、1日当たり2時間程度の残業に相当します。)
(2)臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
・月100時間未満(休日労働を含む)
を超えることはできません。また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。
ここでの大きなポイントは、月60時間を超える残業は、割増賃金率を引上げりことになります。(25%→50%)大企業は、平成22年度から出起用されていましたが、 中小企業で働く人にも適用されることになります。

2.年次有給休暇の確実な取得が必要

施行: 2019年4月1日~
使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える必要があります。

3.正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止

施行: 2020年4月1日~ (中小企業は、2021年4月1日~)
同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに不合理な待遇差が禁止されます。

〇詳細は、下記をご参考にしてください。
働き方改革関連法律の詳細

ここまで当事務所のブログを読んでいただき、ありがとうございます。

2018.07.18

通勤費は前払いで支給すべきか?後払いで支給すべきか?

 東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

ここ最近の東京は猛暑で、外出するのがおっくうになりがちです。
この猛暑が、いつまで続くのでしょうか?

さて、最近、受託させていただきましたクライアント様の通勤費が6カ月定期となっていました。
以前は、内製、税理士事務所でへ依頼され給与計算をされていたようですが、通勤費6カ月分を前払いにされるか?後払いにされるか?特に就業規則に定めることもなく、社員により、前払いや後払いが混在していましたので今回、整理をさせていただきました。

通勤手当2つの支払い方法 

通勤手当の支払い方法として、先払いと後払いがあります。一般的には後払いで、入社後、最初の給料日に基本給や通勤手当も含む各種手当を支給します。 後払いは、従業員が一度立て替えたものを後で精算するイメージです。 
一方、従業員が立て替えずに済むように、先払いとして月の初めに支払ってしまう会社もあります。 
例えば6ヶ月分の定期代を、6月と12までの6か月分を前払いするという規定と仮定します。仮定ケ-スとですと、6月に前払いすることは、労働基準法に違反するものではありません。
ただし、規定で6月と12月と規定しますと、それ以外の月の入社の方の取り合扱いが複雑となります。応答月までは、毎月定期にされるのか?3カ月定期にされるのか?等、管理が複雑となってしまいます。
また、今回のご相談は、入社月に対して最初の6カ月は後払いで、次の6カ月は前払いのスタイルでしたので、給与計算上はミスが多くなってしまいます。
また、社会保険上は、将来に向かっての月割のため、後払いか、前払いかは大きな影響が出ませんが、税務上は、影響が出来る経理処理をされているケ-スもあろうかと思います。
本来、通勤費は、就業規則や賃金規程で定めなければ、労働基準法で定める賃金ではありません。つまり、会社が必ず従業員に支給するものではありません。
さらに、前払いにされ、社員が4日出勤後退職した場合など、既に6カ月の通勤費を支給していた場合、未経過の通勤費を退職した社員から回収されることが困難となり可能性もたくなります。
結論として、小職は、後払いをおすすめし、今後は、後払いで6カ月の通勤費を支給することに規定していただくことにしました。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.07.15

法人設立と社会保険種類とコスト

東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表の社会保険労務士・行政書士郡山博之です。

3連休の真っ只中ですね。
それにしても、今年の夏は暑すぎます。

先週、ご紹介で、企業まもない社長さんと面談をする機会がありました。
企業間もないとのことで、役員報酬は0円のため、社会保険に加入する義務はなく、現在は、国民年金と国民健康保険とのことです。

これから、行政官庁の許認可手続きを行い、許可取得後、役員報酬の発生と従業員を雇用されるとのことで、加入保険の種類と内容の整理及び保険加入手続き、給与計算のご相談でした。

1.社会保険の種類

そもそも社会保険とは、主に以下の4種類の保険のことを言います。 
※実務上は、労働保険(労働保険・雇用保険/旧労働省管轄)と社会保険(健康保険・厚生年金/旧厚生省管轄)と分けます。
(1)健康保険 
経営者・従業員及びその扶養家族が病気やケガをしたり、または死亡や出産をしたりした場合に必要な給付を行う制度。
※40歳以上65歳までは、介護保険も加わります。
(2)厚生年金 
国民年金に上乗せされ、加入者の老齢、障害、死亡時の保障として年金の給付が行われる制度。
※厚生年金は、2階建て制度の2階部分です。1階部分が国民年金です。国民年金は、20歳から60歳までの全国民が加入する義務がありますが、厚生年金は、法人(会社等)に加入義務が発生し、役員及びその従業員が対象者です。
対象者は、70歳までの役員及びその従業員です。国民年金は、20歳から60歳であるのに対し、例えば、中学卒業後、就職された16歳の従業員も厚生年金の対象となります。
(3)雇用保険
労働者が失業した際の失業給付や、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るための支援を行う制度。 
※従業員には原則として加入義務がありますが、法人の代表者の加入はできません。 
(4)労災保険 
就業中や通勤中に従業員がケガや病気になった場合、または亡くなられた場合に、本人やその遺族に対して、必要給付が行われる制度。 

2.会社が負担する保険コスト

保険料率は 従業員の給料の約15%となります。社会保険料は、『標準報酬月額×社会保険料率』により計算されます。
つまり、従業員均一の保険料ではなく、従業員の給与や通勤費の額などによって異なりますが、一般的に、会社・従業員が月々負担する保険料率は、それぞれ従業員の給料の約15%と言われます。
例:
月収25万円の従業員を雇用した場合(通勤費込み)
25万円×15%=概算37,500円
つまり、25万円の従業員を雇用した場合のコストは、
250,000円+37,500円= 287,500円となりますので、従業員給与と社会保険料を見込み、採用計画を練った方がベストです。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.07.08

無期転換ル-ルの例外について

 東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所
代表の 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

本日は、改正の関東地区で、まさに、猛暑の予感です。
最近、気候の変動が激しいので体調管理には気を付けようと思います。

さて、本題です。


【無期転換ル-ルとは?】

2013年4月1日以降に開始した有期労働契約を対象に、通算5年を超えて有期労働契約が反復更新された場合、労働者には無期労働契約を申し込む権利が発生します(労働契約法18条)。 

【無期転換ル-ルの例外】

無期転換ル-ルには、例外があります。それは、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法に該当する場合です。以下の要件がすべて満たす場合は、無期転換ル-ルが発生しません。 
1.適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主に雇用されていること 
2.有期労働契約を締結した事業主から支払われると確実に見込まれる賃金が年間1,075万円以上であること
3.医師、弁護士、公認会計士、特許発明の発明者、5年以上の実務経験を有する建築士やシステムエンジニアなど、高度な専門的知識などを有していること 
4.5年を超える高度な専門的知識を必要とするプロジェクトに従事すること 
上記条件をすべて満たした有期社員が9年のプロジェクトに従事した場合、プロジェクトが完了するまでの9年間は無期転換申込権が発生しないことになります。 
ここで、注意すべき点は、無期転換申込権が発生しない期間の上限は“最長10年間となります。 
例えば、プロジェクトが10年を超えて15年の場合は、15年に満たない期間の途中であっても10年が経過した時点で無期転換申込権が発生することになります。
この【無期転換ル-ルの例外】のポイントは、雇用してからの通算契約期間となります。
高度専門職でプロジェクトに従事している期間は、そのプロジェクトが完了するまで無期転換申込権が発生しません。しかし、プロジェクト開始日から完了日までの期間が最初の有期労働契約からの通算契約期間を超えない場合に限られます。 
ただし、特例の要件が満たされなくなると勿論、無期転換申込権が発生します。例えば、プロジェクトに従事しなくなった場合 、年収要件(1,075万円)を満たさなくなった場合、都道府県労働局長による計画の認定が取り消された場合 などです。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。
給与計算、就業規則、社会保険加入、人事評価制度の設定などは、当事務所へお任せください。

2018.07.04

契約社員と正社員の手当の支給に関する判例と今後の人事制度

 東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表の 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

昨日までは、真夏の陽気ですが、今日から天気が下り坂ですね。
梅雨明けが早すぎて、水不足が懸念される中、恵みの雨でしょうか。

さて【本題】です。

運送大手ハマキョウレックス事件では、契約社員と正社員に支給する手当の格差が違法とされ、損害賠償が命じられる判決が最高裁で出されました。同時期に争われた神奈川県の運送会社・長澤運輸事件では、定年後再雇用されたドライバーが会社を相手取り「定年により給与が下がるのは違法」と訴え、高裁差し戻しの判決となりました。「同一労働同一賃金」の動きがある中、非正規社員への給与(賃金)制度や人事制度については、今後ますます真剣に取り組む必要があります。

今回の判例を踏まえ、60歳で定年を迎え、継続雇用制度を活用され65歳迄勤務されるケ-スが多くいらっしゃいますが、これまでは「正社員と契約社員では賃金制度や福利厚生に格差があって当然」、または「定年後再雇用された場合、当然賃金などの労働条件は下がる」という考え方が常識と考えられている部分がありました。しかし、今後はその取り扱いの差について必ずしも「常識」「当たり前」とはみなされなくなってきそうです。

労働契約法20条では、下記のように定められています。
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない

今後の対応方法としましては、人事制度の中で、完全な【役割給】を設け、契約社員・正社員問わず、【役割給】に応じて、評価制度や賃金制度を設けるべきではないでしょうか?
【役割給】+【責任給】の組み合わせがより明確となります。
例えば、60歳の定年まで、【役割給】+【責任給】で勤務されていた方を、60歳以降の継続雇用制度で、60歳定年退職時給与の60%とされるような仕組を通用せず、その方の【責任給】を外され、【役割給】の内容で、継続雇用制度の給与を決定する方法などいかがでしょうか?

【役割給】を導入される場合も、明確な業務の内容を区分されることが必要かと考えます。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

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