アリスト社労士事務所(港区・渋谷区)のブログ

2018年01月

2018.01.31

午前半休時の労働時間と残業時間のカウントについて

東京・渋谷のアリスト社労士行政書士の
代表 社会保険労務士・行政書士郡山博之です。

1月も最終日となりましたね。
今月もあっという間に終了です。

さて、労務相談での事例をご案内します。
所定労働時間が8時間で、有給休暇制度は、午後休と午前休があります。
始業・就業時間は、午前8時から午後5時(休憩1時間で午後0時から午後1時です。)=法定労働時間8時間

○半休制度の内容
・午前休:午前8時から午後0時
・午後休:午後1時から午後5時

例:A社員が午前休を取得後、午後1時に出社したとします。
退社時間が以下の場合の労働時間のカウントと残業時間、問題点についてご案内します。
1.退社:午後5時の場合
なんら、問題なく4時間出勤です。かつ、終業時間に退社です。

2.退社:午後7時の場合
午後1時から午後7時まで実働6時間です。
しかし、午後5時を過ぎているため、残業代が発生するか?
この場合、労働基準法上は残業代が発生しません。何故なら、1日の所定労働8時間を超えていないからです。
ただし、会社によっては、午後5時以降、残業代を発生させているケースが多いですが、残業代を発生させなくても労働基準法上の違反となりません

3.退社:午後9時の場合
午後1時から午後9時まで8時間です。この場合も、上記2と同様に残業代は実働8時間のため発生しません。
ただし、労働基準法は、「労働時間が6時間を超える場合は、少なくとも45分の休憩時間を与えなければならない」と規定されていますので、休憩時間を与える必要があります。

4.退社:午後11時の場合
午後1時から午後11時まで10時間です。この場合は、以下のような問題が発生しますので注意です。
(1)午後10時迄が9時間のため、労働基準法は、「労働時間が8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」と規定されていますので、休憩時間を与える必要があります。
(2)午後10時から午後11時までは、休憩を1時間した場合でも8時間を超えてしまうため、25%の割増賃金が発生し、かつ、午後10時以降のため、深夜割増25%の割増も発生します。

私としましては、午前休を取得した場合でも、午後5時以降は、通常の勤怠に揃えた方が、勤怠管理が容易だとアドバイスをさせていただいています。一方、午前休取得者に対して午後5時以降残業した場合は、人件費が上昇してしまう「リスク」が発生します。

上記より、実際の運用をどうされるか?経営者の判断となります。勤怠管理と給与計算と直結します。

ここまで当事務所のブログを読んでいただき、ありがとうございました。

2018.01.28

給与計算のリスクと準備

東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士の郡山博之です。

本日のテーマは、給与計算のリスクとその準備する事項です。
役員だけの会社でも、給与計算のリスクは存在しますが、従業員を雇用するに至った場合は、そのリスクが増加します。

以下に給与計算のリスクとその準備についてご案内します。

給与計算のリスク

労務リスク 
最も大きい労務リスクとして残業代の計算です。例えば、残業代の計算を行うとき、勤怠に記録漏れがあったり、残業代の計算ミスがあると、残業代の未払いにつながります。まずは、就業規則と比較し、適切にソフトの数式やその月の出勤日数やその出勤に対して適切な月の労働時間、または年間の月の所定労働時間がしっかりと計算上反映されりように設定されているか確認しましょう。 
情報漏えいリスク 
給与計算では、従業員や扶養家族の個人情報が必要となります。従いまして、適正な管理を行い、社内外ともに情報漏えいを防止しなければなりません。情報漏えいをした場合、個人情報保護法違反から刑事罰や従業員からの訴訟リスクが発生します。最近は、マイナンバー制度もあるために、以前より、情報漏えいリスクが増加しています。
税務リスク 
所得税(源泉徴収税)の計算ミスが生じた場合や控除漏れがあった場合は、税務リスクを引き起こしています。

給与計算を行う上での準備

自社で給与計算を行う場合、当事務所へアウトソーシングをされる場合も、これからご案内する準備は、必ず必要となります。

1.就業規則・給与規定の作成及び確認

就業規則とは、従業員が働く上でのルールや労働条件を定めたものです。就業規則は、従業員 10 人以上の企業は必ず労基署まで届け出ることが法律で義務づけられています。従業員 10 人未満の場合は、作成や届け出の義務はありませんが、前もって作成することをお勧めします。給与は、就業規則の中で定められるのですが、会社によっては、給与に関する部分のみ、「給与規定」として別に定めているケースがあります。この就業規則の中の規程、または、「給与規定」にもとづいて、毎月給与計算を行ないます。

主に確認する点をご案内します。
〇始業・終業時刻や休憩時間
〇時間外労働・深夜労働・休日労働時間に関する割増率
〇会社独自の時間外計算の有無(宿直手当、夜勤手当、代休時の割増率など)
〇時間外計算の単位は10進法か60進法か?⇒勤怠システムやタイムカードの設定が必要です。
〇給与の計算方法、締日と支払日
2.従業員情報の収集・更新 

給与計算には、従業員の情報が必要となります。扶養家族いる、いない、扶養家族の増減があれば所得税(源泉徴収)の控除額が変わり、勤務地や転居があれば通勤手当が変わります。給与に関わる従業員情報は、毎月の給与計算締め日前に情報を収集・確認・更新する必要があります。 

3.社会保険(健康保険・厚生年金)・雇用保険の手続き
保険料は給与計算にかかせない控除項目で、社会保険・雇用保険は法律で定められた条件に該当する場合、加入する義務があります。これらの正社員・アルバイト・パートタイムなどの雇用形態にかかわらず、条件に該当すれば加入することになりますので注意が必要です。 
以下確認する点をご案内します。
(1)社会保険(健康保険・厚生年金保険)
法人の加入要件
〇1週間の労働時間が30時間以上
〇従業員501人以上の企業において、1週間の労働時間が20時間以上(原則ですが例外で協定措置もあります。)
(2)介護保険
原則として、40歳から64歳までのすべての従業員が加入対象となります。健康保険料に上乗せする形で介護保険料を控除します。 
(3)具体的な情報
〇従業員の基礎年金番号と給与情報(定期代を含みます。)
〇配偶者がいる場合は、配偶者が扶養の場合は、配偶者の基礎年金番号、氏名、同居の有無
〇配偶者以外の扶養家族がいる場合は、氏名、職業、同居の有無
※扶養家族は、社会保険(健康保険・厚生年金)だけでなく、所得税(源泉徴収)の控除に対しても必要です。
4.雇用保険 

雇用保険の加入対象
〇31日以上続けて雇用される予定
〇1週間の労働時間が20時間以上の予定

5.労働保険(労災保険) 

全従業員が対象となりますが、保険料はすべて会社負担となりますので毎月の給与計算では対象外です。 

6.勤怠管理 
給与計算には、各従業員の労働時間の計算が必要です。時間外労働の割増賃金(残業代)の計算や、パートタイムやアルバイトの出勤日数や就労時間を管理し給与計算するためです。この給与計算のための根拠して、出勤簿、タイムカードで出退勤記録の管理、クラウド勤怠管理などを行うことが重要です。
7.労働者名簿と賃金台帳
さらに、これまでの従業員の情報を基に労働者名簿を作成することが法律で義務付けられていますし、給与計算を開始すると賃金台帳を保管することも義務付けられています。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございます。 

2018.01.24

社会保険料(厚生年金・健康保険)の給与控除について

東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表の郡山博之です。

昨日の大雪で、今朝の私の自宅近所周辺は、路面が凍結しており、駅までの自転車の道のりが、普段より、遠く感じました。

さて、本題です。
当事務所は、クライアントさんからの給与計算と労働保険や社会保険の手続きと一式受託しています。
その中で、人事担当者から、質問がある事例をまとめてみましたので、ご案内します。

事例1

従業員の退職日が、12月31日。賞与の支給日が1月10日の場合の社会保険料(厚生年金・健康保険)の控除は、どうなりますか?

1月1日付で、社会保険の喪失となるため、1月10日時点での賞与に関する社会保険料は発生しません。
余談ですが、給与計算上は、既に退職済みのため、所得税法上は「甲欄」計算ではなく、「乙欄」計算となりますので、注意が必要です。

また、退職日が7月25日で、賞与支給日が7月31日の場合でも、7月26日付で社会保険の喪失となりますので、賞与に関する社会保険料は発生しません。

事例2 

給与が、当月月末時締めで当月25日払いで月末退職の場合、何故、社会保険料(厚生年金・健康保険)の控除が2カ月分なのですか?

社会保険は、取得した月の翌月に保険料が発生します。つまり、4月1日に入社をされた従業員の社会保険料は、5月に控除となるのが原則です。
例えば、7月31日に従業員が退職した場合は、社会保険の喪失日が8月1日となりますので、7月25日の給与で社会保険料を2カ月分控除する必要があります。
内訳は、6月分の社会保険料と7月分の社会保険料の2カ月分ということになります。
これは、あくまでも原則となります。
当事務所クライアントさんでは、従業員から入社した月から社会保険料を控除しているケースがあります。この場合は、7月31日に退職しても社会保険料控除は当然のことながら1か月分で済みます。

余談ですが、当月締めの翌月20日払いのケースは、常に1か月分の社会保険料の控除なり、会社側も勤怠管理もし易いため、当事務所は、就業規則の作成から給与計算の業務を受託する場合は、クライアントさんにお勧めしています。

事例3 

当月末締め翌月10日払いのケースで1月20日に退職した場合、なぜ、2月10日支給の給与には社会保険料(厚生年金・健康保険)が発生しないのですか?

社会保険料は、日割りでなく、月割りとなります。つきましては、1月20日に会社を退職した場合は、1月は最初から社会保険の対象者とならなくなり、国民年金や国民健康保険の対象者になります。また、次の転職先が決まっている場合は、次の転職先で社会保険料の対象者になり、その転職先で社会保険料が控除されることになります。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.01.21

休日出勤労働についての割増率について

東京・渋谷のアリスト社労士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

本日のテーマは、休日出勤労働の割増率についてご案内します。

休日出勤というと、135%割増しが当然と言う解釈を持っていらっしゃる場合が会社側も従業員側も多いです。
しかし、「労働基準法は、日曜日を基準として、日曜日から土曜日までの間に最低1日は、休日を与えなさい。」と規定しています。
また、割増率につきましては、休日労働の割増率も含んで以下のように規定されています。

時間外労働割増率 25%
深夜労働割増率 25%
休日労働割増率 35%

では、以下の就業規則の事例毎に、休日出勤についてご案内します。

1.事例A

第○○条(休日)
従業員の休日は、次の通りとする。
①土曜日・日曜日
②国民の祝日に関する法律による休日
③年末年始(12月30日より翌年1月3日迄)
④その他会社が指定した日

第○○条(割増賃金)
【休日出勤手当】所定休日の勤務をしたときはその勤務時間(休日労働)1時間につき 基礎賃金×35%

2.事例B

第○○条(休日)
従業員の休日は、次の通りとする。
①日曜日(法定休日)
②土曜日(所定休日)
③国民の祝日に関する法律による休日(所定休日)
④年末年始(12月30日より翌年1月3日迄)(所定休日)
⑤その他会社が指定した日(所定休日)

第○○条(割増賃金)
【休日出勤手当】法定休日の勤務をしたときはその勤務時間(休日労働)1時間につき 基礎賃金×35%

(比較の前提)
比較の前提ですが、【所定休日】【法定休日】の文言の相違です。相違点は以下の通りです。

【所定休日】
労働基準法上、休日は週1日与えればよいことになっています。しかし、実際には週休2日制を採用する会社が多くあります。労働基準法第32条では、労働時間の上限を、1日8時間・週40時間と定めており、従業員が1日8時間働くことを考えた場合、5日働いた時点で労働時間は40時間に達することから、従業員をこれ以上働かせることができません。このため、1日8時間労働の会社では、休日を週2日に設定することになります。余談ですが、1日6時間であれば、月曜日から土曜日で6日勤務となりますが、1週間の労働時間が36時間のため、日曜日だけ休みを与えれば、労働基準法上、違反となりません。
【法定休日】
労働基準法第35条では、企業に対し、労働者に毎週少なくとも1回(もしくは4週間に4回)の休日を与えなければならないことを定めています。このため、例えば労働者が月曜日から土曜日まで働いた場合、日曜日には必ず休みを与えなければなりません。この日曜日のような、法律で定められている休日のことを、「法定休日」といいます。
事例Aについて

休日に関する規定に、所定休日、法定休日と区分する文言がないため、原則、全てが所定休日になると解釈されます。また、割増賃金の【休日出勤手当】の条文も所定休日としか明記がないため、このケースですと全ての休日が35%割増しとなります。

事例Bについて

休日に関する規定に、所定休日、法定休日と区分する文言があるため、日曜日のみが法定休日となり、その他の休日は所定休日となります。また、割増賃金の【休日出勤手当】の条文は、法定休日の場合と明記があるため、このケースは、日曜日のみ35%割増しとなり、その他の休日は全て25%割増しとなります。

上記より土日出勤や休日出勤が、必ず35%割増しにならないことにご注意ください。

※事例Aは、従業員に手厚い反面、会社の人件費が増加する傾向となります。
※事例Bは、労働基準法に抵触しない割増率の規定となります。

就業規則を作成する上で、重要なポイントになります。就業規則は、常時事業所に10人以上従業員を雇用することになれば作成・届出が必要ですが、従業員を雇用することになった時点で、就業規則を作成され、その規則に基づき、勤怠管理と給与計算を開始する必要があります。1度、運用を開始しますと、万が一、事例Aから事例Bに変更する場合は、「不利益変更」と指摘されるケースもありますので、最初が肝心となります。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただき、ありがとうございました。

2018.01.17

求人内容と労働条件相違の訴訟

 東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所
代表の社会保険労務士・行政書士の郡山博之です。

採用担当者は、求人の際、どうしても、採用を急ぎたい場合、応募数を増やすために、求人内容を曖昧としたり、実際の労働条件より、内容をよく見せかけたりしようする心理が働くかもしれません。
しかし、求人内容と実際の労働条件が異なると、会社側と従業員がトラブルとなり、会社側にとって大きな不利益を招く恐れがあります。

職業安定法は労働条件の明示を企業に義務付けており、企業が自社サイトなどで直接募集して採用する際には、虚偽情報に対する罰則(6月以下の懲役または30万円以下の罰金)があります。しかし、ハローワークなどに虚偽の求人を出しても、是正を求める行政指導はできるものの、現在は、罰則がない状況ですが、昨年から労政審で具体案をさらに協議してるようです。

昨年の実際の判例をご紹介します。


【京都地裁判決 平成29年3月30日判決】

 
○概要 
当時64歳だったBさんは、定年がない点に魅力を感じ、A福祉施設に応募。
A福祉施設のハローワークの求人票には、「雇用形態:正社員」、「雇用期間:期間の定めなし」、「定年制なし」と記載されていました。面接時には,定年制についてはまだ決められておらず、労働契約期間について特にやりとりはありませんでした。しかし、採用後の面談でA福祉施設の代表者はBさんに「定年あり:満65歳」と記載した労働条件通知書を提示し、口頭でも大まかな内容を説明しました。 
翌年、A福祉施設は雇用契約を更新せずBさんを定年扱いとしましたが、これを不服に思ったBさんは“求人に記載されている通りの定年のない雇用契約”を主張し、訴訟を起こしました。 

○判決 
裁判所は、「求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなどの特段の事情のない限り、雇用契約の内容となると解するのが相当である」とし、Bさんの署名押印のある労働条件通知書に記載された内容ではなく、求人票に記載された内容での雇用契約の成立を認めました。
その結果、本契約は期間の定めのない労働契約であり、解雇は無効とされました。 

この判決ですと、労働者の同意の有無は、「労働条件通知書」や「労働契約書」の署名押印の有無ではなく、労働者の自由な意思に基づく同意の有無について判断しており、実務の参考になるので、紹介させていただきます。


ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.01.14

吸収合併の際の労働保険・雇用保険・社会保険の手続きについて

東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士の郡山博之です。

最近、株式交換などにより、独立した会社が、他の会社の100%子会社になるケースが増えてきています。
単純に100%子会社になるような場合は、原則、株主が変更となるだけで、労働保険・雇用保険・社会保険の変更手続きは不要となります。

しかし、吸収合併の場合は、手続きが労働保険・雇用保険・社会保険について異なってきますので、注意が必要となりますので、ご案内します。 

1.社会保険について

健康保険や厚生年金につきましては、廃止会社が「適用事業所全喪届」を提出します。さらに従業員(被保険者)全員の被保険者証を添えて「資格喪失届」を提出します。

(その他必要書類)
(1)解散登記の記入がある法人登記簿謄本のコピー(破産手続廃止又は終結の記載がある閉鎖登記簿謄本のコピーでも可)
または、「雇用保険適用事業所廃止届」(事業主控)のコピーのいずれか

(2)上記の書類が添付できない場合は、以下の書類のいずれかが必要となります。
①給与支払事務所等の廃止届のコピー
②合併、解散、休業等異動事項の記載がある法人税、消費税異動届のコピー
③休業等の確認ができる情報誌、新聞等のコピー
④その他、「健康保険・厚生年金適用事業所」に該当しなくなったことを確認できる書類

上記と並行し、存続会社は、消滅会社の従業員(被保険者)全員の資格取得届の提出が必要です。あわせて、被扶養者がいる場合は、被扶養者異動届の提出も必要となります。

2.雇用保険について

雇用保険は社会保険と異なり、原則として被保険者の消滅会社と存続会社を同一事業主とする認定手続きを行います。
この方法は、従業員(被保険者)の「雇用保険被保険者資格取得・喪失」の手続きではなく、被保険者期間が同一事業主として通算されるので、消滅会社に勤務していた期間についても存続会社の勤務期間とすることができ、従業員(被保険者)に不利益を与えなくて済みます。

(同一事業主の認定手続きをする場合の必要書類)
(1)新旧事業実態証明書
(2)添付書類
合併契約書、合併元と合併先双方の登記簿謄本、株主総会議事録、従業員承継の覚書、雇用保険被保険者の名簿などの
複数の書類が必要です。また、各ハローワークによって独自の用紙での申請を求められたり、提出書類が異なる場合も
ありますので、事前に管轄のハローワークへご確認ください。

3.労働保険手続について

消滅会社と存続会社の労災保険上の「事業の種類」が同じ場合と異なる場合で手続きが異なります。


【事業の種類が同一の場合】

原則として、消滅会社の労働保険を廃止し、存続会社の労働保険を適用することになります。手続きとしては、
①消滅会社の「労働保険確定保険料申告書」を管轄の監督署に提出し確定保険料を納付することで消滅会社の労働保険の適
用事業を廃止します。(還付の場合は、還付請求書を提出)
②存続会社の手続きとしては、合併日以降に見込まれる消滅会社の概算保険料の計上が必要となります。
※年度の合併後賃金総額の概算見込額が既に申告した吸収前概算賃金総額と比べて2倍を超え増加、かつその合併後賃金総額による概算保険料の額が合併前に申告済み概算保険料よりも13万円以上増加する場合に増加概算保険料の申告・納付が必要です。


※消滅会社の事業所も合併後も事業継続する場合は、労働保険の継続事業の一括に関する手続きが必要となります。合併前、消滅会社の方で継続事業の一括がされていない事業所については、存続会社はこの事業所を管轄する労基署に「労働保険関係成立届」を提出し、提出後の新たな労働保険番号で、「継続事業一括認可・追加申請書」を労基署へ提出し、継続事業の一括を行います。合併前、消滅会社にて継続事業の一括がすでに行われていた場合には 存続会社は「継続被一括事業名称・所在地変更届」を労基署に提出し、消滅会社の本社・支店等各事業所の継続事業の一括を行います。

【事業の種類が異なる場合】

消滅会社の労働保険の適用事業は廃止することなく継続されます。なお、合併による会社名、住所、事業主等の変更に伴い、「労働保険名称所在地等変更届」の提出が必要となります。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

2018.01.10

振替休日と代休の相違点

 東京・渋谷区のアリスト社労士行政書士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。


クライアントさんの就業規則の見直し業務を請け負う際に、振替休日と代休と双方記載があるケースがあります。
クライアントさんご自身が混同されている場合が多いので、以下に相違点をご案内させていただきます。

○振替休日とは

休日の日を出勤する代わりに、出勤日だった日をあらかじめ休日に指定することをいいます。ここでのポイントは、事前予告です。したがいまして、休日労働とはならず、仮に法定休日の日曜日に出勤したとしても、その日は、既に他の労働日に振り替えられているため休日出勤にならないため、休日労働に対する割増賃金の支払義務もありません。

○代休とは

休日労働後、その代償として特定の出勤日を休日にすることになりますので、前もって休日を振り替えたことになりません。したがいまして、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。法定休日の場合は35%、法定外休日の場合は、25%の割増賃金が支払われます。単純計算ですが、135%や125%ではありません。

(根拠)休日出勤8時間の場合
休日出勤日=時給×135%×8時間⇒休日出勤のため追加
代休日 =時給×100%×8時間⇒休みのため控除
    35%の割増賃金が発生  

一般的には、休日と出勤日の入れ替えは、急な仕事量の対応するケースが多く、振替休日多いです。
振替自体の有効性については、【休日と定められた日が絶対的に労働から解放されたものかどうかについては、労働契約の内容いかんによるもの】と解されています。つまり【就業規則に、振替を必要とする場合には休日を振り替えることができる旨】を設ければ、違法性となりません。ただし、振替休日とするには、あらかじめ振替日を特定する必要があります。また、振替の一番のポイントは、【4週4日の休日を確保】しなくてはいけません。

また、振替休日であっても、週を越えて、1週間の労働時間が週40時間を超える場合は、超過した時間数の賃金の支払いが必要です。つまり、4週4日を維持し、かつ、1週間の労働時間が40時間を越えなければ、振替休日のみの定めでも問題がないということです。この場合は、繰り返しますが、割増賃金は、発生しません。

つまり、振替休日も代休も両方記載されることも間違いではありませんし、理解された上で一方のみ記載されることも間違いではありません。

ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

就業規則作成で、重要なポイントですので、ご不明な場合は、お気軽にお問い合わせください。

2018.01.07

平成30年度より給与計算実務の注意点!

東京・渋谷のアリスト社労士行政書士事務所の
代表の社会保険労務士・行政書士の郡山博之です。

当事務所も年明け早々ですが、月末締めの翌月10日支給のクライアント様が数社ありますので、10日支給に備えて、給与計算業務を行っています。

過去の記事に、年末調整について何度かご案内していますが、平成30年度1月支給の給与計算から昨年までの給与計算と異なる実務が生じる場合があります。

それは、昨年の税制改正で、配偶者控除等の見直しが行われ、平成30年分以後の所得税から適用されることになったことです。

具体例として、社員本人もその配偶者も給与収入を前提にしてご案内します。
大きなポイントとして下記の通りです。

〇社員本人(納税者)の収入制限が設けられ、控除額の変更も103万円が150万円に配偶者に関して新しいグループに分けられました。
つまり、平成30年分より、配偶者控除(所得控除)38万円の対象となる配偶者の給与収入の上限が、103万円(合計所得金額38万円)から150万円(合計所得金額85万円)に引き上げられました。
また、配偶者の収入が150万円を超えても、所得金額に応じて配偶者特別控除を受けることができます。配偶者特別控除の場合、対象となる配偶者の給与収入の上限は201万円(合計所得金額123万円)となります。
以前の記事で書いていますが、税法上は、控除額の変更が150万円となっていますが、厚生年金や健康保険は、配偶者の年収が130万円以上になりますと、社員本人の扶養に入れなくなります。
〇社員本人(納税者)の収入制限と、控除額の変更
配偶者控除と配偶者特別控除の適用される社員本人(納税者・給与所得者)に収入制限が設けられることになりました。平成29年度までは収入制限がありませんでした。また、扶養者の給与収入が1,220万円(合計所得金額が1,000万円)を超える場合には消失します。昨年と同様の控除を受けるには、1,120万円(合計所得が900万円)以下である必要があります。
〇配偶者に関する新しいグループ分け
社員本人(納税者)と配偶者の給与年収によって控除額が異なります。
 例えば、「源泉控除対象配偶者、かつ同一生計配偶者」のように重なることがあるので、配偶者控除の対象が、3種類になりました。
「源泉控除対象配偶者」⇒新設(平成29年度以前とほぼ同様です)
社員本人(納税者)の給与年収1,120万円以下(合計所得金額900万円以下)
配偶者の給与年収150万円以下(合計所得金額85万円以下)
の場合の配偶者
「同一生計配偶者」⇒新設(配偶者が障害者に該当する場合)
社員本人(納税者)の給与年収制限なし
配偶者の給与年収103万円以下(合計所得金額38万円以下)
の場合の配偶者
「控除対象配偶者」
社員本人(納税者)の給与年収1,220万円以下(合計所得金額1,000万円以下)
配偶者の給与年収が103万円以下(合計所得額38万円以下)
の場合の配偶者
配偶者に関する扶養親族に等にの数え方
配偶者が源泉控除対象者に該当する場合は、扶養親族等の数に1を加えて計算します。さらに同一生計配偶者が障害者に該当する場合は、扶養親族等の株に1を加えて計算します。つまり、毎月の給与から所得税を控除するときに関係があるのは、源泉控除対象配偶者と同一生計配偶者です。また、控除対象配偶者は、年末調整のときに関係し、配偶者控除の対象となります。

平成30年度の給与計算での注意点

社員本人(納税者)給与年収が、明らかに1,220万円を超える場合は、配偶者を扶養親族数から外して、給与計算をしないと、年末調整で、所得税の追加となってしまう場合が多いので注意が必要です。
また、社員本人(納税者)1,120万円超(所得900万円超)~1,220万円以下(所得1,000万円以下)の場合は、平成29年度と同様に扶養親族等の数に1を加えて計算するか否かと、社員に確認する必要があります。これまで通りの計算ですと、年末調整で所得税の追加に転じる可能性が大きいからです。
逆に社員本人(納税者)給与年収が1,120万円以下(900万円以下)であれば、これまでの扶養親族数の設定で問題ありません。
ここまで、当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

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