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2018.09.19

固定残業制度判例のご案内

 東京・渋谷のアリスト社労士事務所の
代表 社会保険労務士・行政書士 郡山博之です。

働き方改革の流れは止まることなく、長時間労働に対する世間の目はますます厳しくなっています。残業代を固定的に支給する固定残業制度についても、どちらかというとネガティブな印象を与えてしまいます。さらに固定残業代を巡った労使紛争も起きているようです。再度、固定残業代の仕組みと、最近の重要な判例についてご案内します。

そもそも固定残業制度とは

固定残業制度とは、一定の残業を見込んで残業代を定額で支払うことを言います。固定残業制度の成立要件として4つ挙げられます。

1.    就業規則・雇用契約書に記載されていること

2.    固定残業代業代に相当する残業時間を明示していること

3.    給与明細上、固定残業手当が分離して記載されてあること

4.    固定残業代に不足があれば支払っていること

このうち一つでも満たしていない場合には固定残業制度そのものが無効とされ、「残業代を払っていない」と判定されるというのが定説です。実際に労使の裁判においても、この4つの要件が重視されてきました。

1.就業規則・契約書の明記
2.残業見込み時間を明示
3.給与明細書に分離記載
4.差額支払い

7月の薬剤師の判例

ところが、719日に公表された最高裁判決において、この定説通りでない事例が出ました。この裁判の原告は薬剤師で、雇用契約書に「月額562500(残業手当含む)」「給与明細書表示(月額給与461500円 業務手当101000(みなし時間外手当)」などの記載がありました。一審二審では、前述の要素のうち「②固定残業代に相当する残業時間を明示していること」「④固定残業代に不足があれば支払っていること」を満たしていないことから、定額残業代制度を無効とみなしましたが、最高裁では一転して固定残業代制度を有効なものとしました。

なぜ固定残業代制度が有効とされたか

判旨によると、定額残業代制度が有効であるか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、

⑴使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容

⑵労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情

を考慮して判断すべきとしています。

今回、⑴について、原告以外の他の社員に対しては定額残業代に相当する残業時間(30時間)を明示し、サインをもらっている書面がありました。また、⑵実際の残業時間を計算したところ、定額残業代で定める30時間とほとんど差異がありませんでした。これらの事情が考慮されたものと思われます。加えて、30時間程度という毎月の残業がこの種の裁判の中では比較的少ないこと、並びに原告の給与月額が50万円超と、世間一般的に見て高いことも影響しているのかもしれません。

固定残業制度実務への影響

この判例の中で注目すべきは「差額を計算して払っていないから即無効というわけではないが、見込み残業時間が過度に長くないこと、ならびに実際の残業時間との乖離が少ないことが大切」という判断がされたことでしょう。今までの定説通り書面の整備は重要ですが、加えて「実際の残業を定額残業代の範囲に抑える」ことの重要性がますます高まっていきそうです。

ここまで当事務所のブログを読んでいただきありがとうございました。

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